アクションプラン from 2012

1.方針編

Action Planとは何か

JCI CreedやJCI Mission、JCI スローガン、新JC宣言、綱領、定款、I Love JC 4つの精神、三信条、そして4つの機会…。私たち福井JCでは、「より明るく、より豊かな社会」を目指すために、多くの素晴らしいビジョンを共有しています。ただ、これらのビジョンが示している「より明るく、より豊かな社会」は、言うならば遥かかなたにある究極のゴールでもあります。このため、多くのメンバーが直面する、「与えられた1年間でどのような活動を行っていくべきか」という課題との間には大きなギャップを感じ、舵取りに苦心している場面に数多く遭遇してきました。

このビジョンや戦略と活動を結びつけるものとして、Action Planというキーワードが存在します。このAction Planにはさまざまな定義づけがなされていますが、それらを凝縮して表現すると、「ビジョンや戦略を実施するための基本方針であり、限られた時間軸における具体的計画」となります。
福井JCがAction Planの必要性を考えはじめたのは、1998年のことでした。その後、3年の月日を経て2001年に完成したのが、『Action Plan 2010』です。この『Action Plan 2010』は、組織のアイデンティティを見直し高めていくこと、そして全国会員大会を福井で開催する意義を明確にすることの2つを基本方針として策定されました。『Action Plan 2010』は、10年が過ぎた今でも、福井JCの羅針盤として重要な役割を果たしています。特に、それまでには意識の薄かった、年度をまたいだ戦略の必要性という概念を組織に植えつけた成果は、その後の活動に大きな影響を与えました。

ご存知のように、私たちの組織には40歳までしか在籍できないという年齢制限があることによって、常に新陳代謝が行われています。いわば動的平衡の上に基盤をなしている福井JC において、『Action Plan 2010』の策定当時のことを知っているメンバーは、ほんの一握りとなってしまいました。組織として、基本方針を定めた理由をメンバーの大半が全く分かっていない、という状態は望ましい姿ではありません。また、具体的計画としても、10年前と現在とでは置かれている状況があまりにも違います。これらのことから、今、Action Planそのものの内容を全面的に見直す必要がある時期になっていると言えます。

そこで、創立50周年を機に、私たちは『Action Plan from 2012』を策定します。まず、『①方針編』において、私たち福井JCはどのような領域で、どのような強みを活かして活動していくべきなのかを指し示す新たな羅針盤を構築します。続く『②目標・計画編』では、これからの私たちが目指す姿を明らかにし、どのようなふくいを目指すのかを提起した上で、具体的にどのようなテーマに基づいて活動を行っていくべきなのかを提案します。これらの『Action Plan from 2012』が、所信や職務分掌をはじめ各種議案にいたる全ての文書の作成にあたって、有益な示唆が与えられることを期待します。

私たちはどのような領域で活動すべきか

「より明るく、より豊かな社会」という目的地に辿り着くための航路は、数限りなく存在します。その中から、私たちは、私たちの持てる限りある資源を効果的に活用できる航路を選ばなければなりません。そのためには、私たちはどのような領域で活動していくことで、究極のゴールを目指していくのかを明確にする必要があります。
では、私たち福井JCはどのような領域で活動していくべきなのでしょうか。この問いに対して、「誰に対して」「どのような方向性で」という2つの軸を中心に考えていきましょう。

活動の対象

まず、福井JCは「誰に対して」活動を行っていくべきなのでしょうか。この活動の対象は、大きく2つに分類できると考えられます。それは、組織外と組織内です。なお、ここで言う組織外とは、これまでの事業計画で考えてきている対外対象者という表現よりも広く、具体的には組織外の人・組織・もの・場所といったものを表しています。

ところで、なぜ組織内の私たちも福井JCの活動の対象となるのでしょうか。それは、私たち自身の成長も「より明るく、より豊かな社会」を目指していく上で重要な資源だからです。未来がどうなるのかは誰にも分かりませんが、その未来を託されているのが誰なのかは分かっています。究極のゴールを目指していくためには、積極的な変化を創り出すことのできる、行動的な若い市民が必要なのです。そして、率先してこの行動的な若い市民とならなければならないのが、私たちなのです。

活動の方向性

次に、福井JCは「どのような方向性で」活動していくべきなのでしょうか。この活動の方向性について、1962年の設立総会において採用された定款では、以下のように記載されています。

第3条(目的)

    1. 指導者訓練を基調とした青年の個人的修練、社会への奉仕、及び会員相互の親睦。
    2. 地域社会における社会、経済、文化に関する問題の研究、実施。
    3. 正しい経済の発展。
    4. 日本青年会議所及び国際青年会議所の機構を通じ、日本、世界の青年と提携し、国際的理解及び親睦を助長し、且つ相互信頼を増進する。

本会議所は、特定の個人または法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行わない。
本会議所は、これを特定の政党のために利用しない。

そして、公益社団法人として2012年に新たに定められた福井JCの定款では、以下のように記載されています。

第3条(目的)
本会議所は、青年が英知と勇気と情熱をもって能動的に活動できる機会を提供し、会員の連携と指導力の啓発を通じて社会奉仕の進展や国際理解の深化による地域社会の健全な発展を図ることにより、青年の自立と社会の連帯がいきいきと相和する明るい豊かな社会の実現に寄与することを目的とする。

比べてみますと、これらの文章が伝えようとしていることには大きな違いがないことが分かります。また、JCの三信条であるTraining(個人の修練)・Service(社会への奉仕・貢献)・Friendship(世界との友情)、そして4つの機会であるLeadership Development(個人の機会)、Community Development(地域の機会)、International(国際の機会)、Business(ビジネスの機会)のすべてがどちらの文章にも盛り込まれています。これらを改めて確認すると、「社会への貢献を通した資質の向上」、「資質の向上を通した社会への貢献」、そして「それらを通した友情の醸成」に集約されます。

この中の、「それらを通した友情の醸成」はそれ自体が活動の方向性ではなく、その他の2つの副産物であると考えた方が妥当でしょう。もし、友情の醸成が活動の方向性であるのなら、私たちは親睦会と懇親会を活動の柱にすればいいのです。しかし、私たち福井JCは言うまでもなく公益的な組織であり、そのような組織ではありません。「社会への貢献」と「資質の向上」、この2つが私たちの活動の方向性であると言えます。表現の違いこそありますが、これまでもそしてこれからも、私たちは「指導力開発と社会開発」という1960年代に掲げられたJCのスローガンを追い求めているのです。

では、私たちはどのような「社会への貢献」と「資質の向上」を目的とするべきなのでしょうか。もう少し焦点を絞ってみましょう。
JCIでは、ホームページの冒頭で自分たちの組織を“young active citizens creating positive change(積極的な変化を創造する活動的な若い市民)”という言葉で紹介しています。この短いフレーズが、先ほどの問いの答えを指し示してくれています。社会への貢献は積極的な変化を促すためのものであり、資質の向上は行動的な市民となるためのものである。つまり、私たちの活動の方向性は、「積極的な変化を促すことによる社会への貢献」と「行動的な市民となるための資質の向上」という言葉に集約できるのだと考えられます。

対象の細分化

これまで考えてきた対象と方向性による活動領域をもっと明確なものとするために、もう少し対象と方向性を細かく分けてみましょう。

組織外

組織外については、ふくいという私たちの活動地域内と活動地域外とで区分できます。舞台となるふくいに対して何らかの関わりを持っている人・組織・もの・場所と、全く関わりを持っていない人・組織・もの・場所。共通の背景や文脈がある場合とない場合とでは、同じ目的を達成しようとしても、手法を変える必要があります。また、活動に対する物理的・心理的な距離の違いも考慮しなければなりません。
ところで、なぜ活動地域外も活動の対象となるのでしょうか。実は、これまでの私たち福井JCの活動でも、活動地域外が活動の対象となったことが数多くあります。普段行っている事業にばかり目を向けていると見落としがちですが、姉妹JCとの交流やホームページの運用、各種大会でのブース出店も私たちの活動の重要な一部です。これらの事業を通して、他を知ることによって己を知ることも重要な活動なのです。

組織内

組織内については、JayceeとJC、つまりメンバー一人ひとりと福井JCそのものという区分をしてみたいと思います。個人と法人を並列に対象とすることには違和感があるかもしれませんが、どちらも重視すべき対象です。
Jayceeは、前にも説明したとおり、「積極的な変化を創造するための活動的な若い市民」として、一人ひとりが成長することに大きな意義があります。一方で、多くの方々からの期待を受けているのは、市民としてのJaycee一人ひとりではなく、福井JCという組織です。この組織そのものが磨かれ、輝き続けなければ、新たなメンバーの加入も途絶えてしまいますし、様々な方々と共に効果の大きな活動を行いたいと思っても、それができなくなってしまいます。

方向性の細分化

社会への貢献

社会への貢献については、積極的な変化を促す活動の中心は、意思や情報の伝達であると考え、「発信・提案」と「交流・協働」の2つに区分してみたいと思います。「発信・提案」は活動を通してこちらから一方的に情報や意思を伝えることを意図しており、「交流・協働」は活動を通してこちらからの情報と対象者からの情報や意思を双方向で伝え合うことを意図しています。「私たちはこんなことをしている」「私たちはこう思う」ということを伝えるために行動することと、「皆さんはどのようなことをされているのですか」「皆さんはどのように思われていますか」ということを聞き、共に考え、行動することは明確に区別すべきです。なぜなら、この両者では活動を具現化するための手法が異なってくるからです。

資質の向上

資質の向上については、行動的な市民に必要な資質を大きく2つに分け、「構想力」と「実現力」としてみたいと思います。「構想力」とは、イメージを創り、伝え、組み立てる能力のことで、活動の実施に至るまでの構築に関わる力のことです。また、「実現力」とは、イメージを具現化し、細分化し、巻き込む能力のことで、活動を実行することに関わる力のことです。

以上の細分化を踏まえると、活動領域のマトリックスは図のようになります。

活動領域のマトリックス

なお、「活動地域外」における「行動的な市民となるための資質の向上」に該当する分野については、活動領域外としました。これは、優先順位によるものです。福井JCが行う活動として考えた場合、この2マスよりも他の14マスを優先させた方が、「より明るく、より豊かな社会」の達成に近づける可能性が確実に高いと考えられるためです。

以上のことから、14の領域のいずれか、もしくはいくつかにあてはまる活動が、私たち福井JCが行うのにふさわしい活動であると考えられます。

私たちの強みは何か

「JCもある時代」という言葉を聞くようになって久しくなりました。それでも、毎年のように「ぜひ福井JCさんに任せたい」「ぜひ福井JCさんと一緒にやりたい」というありがたいお声かけをいただいています。なぜこのようなお声かけをいただけるのでしょうか。それは、普段私たち自身があまり気づいていない、私たちの強みに魅力を感じていただけているからだと考えられます。では、私たち福井JCの公益組織としての強みとは一体どのようなものでしょうか。改めて考えてみましょう。

多くの場合、組織の強みはその組織にしかない資源から生まれてきます。福井JCにとって最も大切な資源は何でしょうか。この問いには、ほとんどの方がメンバー、すなわち「Jaycee」であると答えるでしょう。
では、Jayceeの特徴とは一体どのようなものでしょうか。私たちJayceeには大きく2つの特徴があります。1つ目は、「若さ」です。JCへの在籍は20歳から40歳までと年齢制限があり、Jayceeは常に青年であることが求められています。2つ目は、「多様性」です。私たちは他の多くの団体のように、同業者や商工業者だけの集まりではありません。「より明るく、より豊かな社会」を目指すという組織の趣旨に賛同する方であれば、人種・国籍・性別・職業・宗教を問わず、誰でも入会できる団体なのです。
また、組織の強みはその組織独自の仕組みによって強調されるものです。福井JCにとって、それはどのようなものなのでしょうか。
第1に、会員資格が40歳まで、としている定年制が挙げられます。在籍期間が限られていることは、限られた時間をいかに有効活用しなければならないのかをメンバーに深く考えさせます。第2に、明確なルールに則っている、ということが挙げられます。常任理事会、理事会における複数回の上程と質疑応答、事業計画に即した事業の実施と予算計画に基づいた予算の執行。これらを通して、私たちの活動には厚みを持たせることができます。

これらの大切な資源の特徴と組織独自の仕組みから考えられる私たちの強みを表したのが、下図です。私たちの強みは「行動力」、そして「新規性」です。若さのある私たちは、限られた期間で成果を残したいという想いがあれば、構想を実現させ、想いを行動で表現することができます。そして、多様性のある私たちは、毎年違うメンバーと出会い、そのメンバー内でさまざまな議論を繰り返していくことで、様々なアイデアを生み出す可能性があります。

そしてもう1つ、私たちには忘れてはならない基盤となる大きな強みがあります。それは先輩たちが築き上げてこられた、50年という伝統と実績です。これまでに活動地域内で発揮してきた「行動力」と「新規性」があるからこそ、私たちはこれからを期待されているのです。そして、その伝統と実績という基盤を更に強固なものとして築いていくのは、私たちの責任でもあります。

私たちはどのように活動を選ぶべきか

これまで考えてきたことを踏まえ、私たち福井JCではどのように活動を選んでいくべきなのでしょうか。下図は、活動の選定基準を表しています。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

活動の選定基準

  1. マトリックスの14マスに該当する活動であるか
    • 対象から必要とされる目的か/対象に必要だと考えられる目的か
    • 目的を達成するための手法は明確かつ適切であるか
  2. 私たちの強みを生かすことができるか

マトリックスの14マスに該当する活動であるか

私たちは、活動領域を選定するにあたり、対象と目的という2つの観点に当てはまらなければなりません。マトリックスの14マスのいずれか、もしくは複数に該当する活動であれば、おのずから私たち福井JCが選ぶにふさわしいものとなります。
では、どのようなことが対象と目的にふさわしい活動と言えるのでしょうか。次の2つを満たしていることが望まれると考えられます。

対象から必要とされる目的か/対象に必要だと考えられる目的か

まず、目的が活動の対象から必要とされているかどうか、つまり、ニーズがあるかどうかの確認は必要です。また、啓蒙活動のように、必ずしも必要とされていなくても私たちが必要もしくは有用だと考えていること、言い換えれば潜在的にニーズがあることも行っていく必要があります。

目的を達成するための手法は明確かつ適切であるか

どの目的を達成するとしても、何らかの手法をとることが必要です。この手法が曖昧であったり、不適切なものであったりすると、活動の意図が目的とは異なったものとなってしまいます。手法が明確でありかつ適切であること、これらは活動を選定する上で非常に重要な要素です。

私たちの強みを活かすことができるか

対象から望まれ、明確かつ適切な手法で目的が具現化できることだとしても、私たちがそれを行うのにふさわしい組織ではなかったとすれば、その活動がもたらす効果は限られたものとなってしまいます。また、そのような活動を行ったために、もっと大きな効果を上げることができたかもしれない貴重な資源を費やしてしまうことにもなってしまいます。私たちの強みである、「行動力」と「新規性」を大いに発揮できる活動を選ばなければなりません。

以上の2点は、活動の選定基準としてはかなりシンプルですが、それだけに非常に重要な意味を持ったものです。ぜひとも、2点とも満たすことのできる活動を考え、実施してください。

最後に

『①方針編』では、私たち福井JCはどのような領域で、どのような強みを活かして活動していくべきなのか、これらを指し示す新たな羅針盤を提案してきました。最後に、これらの活動を選定する前提として最も大切にしていただきたいことをお伝えしたいと思います。
それは、私たち福井JCが目指している究極のゴールは「より明るく、より豊かな社会」である、ということを常に忘れることなく活動して欲しい、ということです。
活動を続けていくと、活動することそのものが目的となってしまったり、数字としての目標の達成が目的となってしまったりしてしまうことがあります。「何のために、この活動を行っているのか」、「何のために、自分にはこの役割が与えられているのか」。これらのことを一人ひとりがきちんと自覚できているとき、福井JCの活動は非常に魅力的なものとなります。ぜひともこのことを忘れずに、活動に取り組んでいただきたいと思います。

2.目標・計画編

はじめに

「より明るく、より豊かな社会」という究極のゴールは示されているにもかかわらず、「与えられた1年間でどのような活動を行っていくべきか」という直面する課題との間には大きなギャップがある。『Action Plan from 2012』は、このギャップを埋めることを意図して作成されています。
『①方針編』では、究極のゴールである「より明るく、より豊かな社会」を目指すために、私たちは「誰に対して」「どのような目的で」活動していくべきであるのか、そしてどのような強みを活かして活動していくべきであるのかを検討しました。言うならば、『①方針編』は、究極のゴールに向かうための活動の羅針盤としてもらうことを意図して作成されたものです。

この『②目標・計画編』は、具体的に「どのような」活動をしていくのかを考えることで、ビジョンと戦略を結びつけることを意図して作成しています。まず、福井JCが活動を通して目指す姿を検討し、その上で福井JCが活動を通して目指すことを明らかにします。そして、福井JCとして今後5年から10年をかけて取り組むべき具体的なテーマについて説明します。さらに、具体的なテーマに沿って考えられる活動を、ヒントとして提起したいと思います。

私たちは活動を通してどのような姿を目指すのか

これから、私たちは活動を通してどのような姿を目指していくべきなのでしょうか。このことを考える前提として、『Action Plan 2010』ではどのような姿を目指していたのかを振り返ってみましょう。

Action Plan 2010で私たちが目指した姿

図は、『Action Plan 2010』で私たちが目指した姿を図示しています。『Action Plan 2010』では、「自己に、家庭に、企業に、そして地域に、より価値のある変化を生み出す」ことを私たちの使命としました。そして、良いと思った意図を活動として行うのではなく、新たにマーケティング力・マネジメント力という切り口を設けることで、社会サービスの効率性を高めることを目指すようになりました。この社会サービスの効率化という概念は、今でこそ当たり前のものとして捉えられていますが、当時は非常に画期的なものでした。そして、マーケティング力・マネジメント力という新たな切り口を持つことで、私たちは、活動への優先順位づけや対投入資源効果という新たな価値基準を持つことができるようになりました。

では、更なるレベルアップのために、私たちがこれから目指す姿とはどのようなものなのでしょうか。この問いに対する答えを考えるとき、一番考慮しなければならない私たちの変化は、公益社団法人となる、ということです。公益社団法人となることで、私たちはこれまで以上に、より公益的な使命を果たすことを基軸としなければなりません。

これから私たちが目指す姿

上の図は、これから私たちが目指す姿を図示しています。『Action Plan 2010』の実践を通して手に入れたマーケティング力・マネジメント力はそのままに、これからの私たちは、社会的な活動をより公益的なものとして高めていくことに挑戦していくのです。
ところで、公益的な活動とはどのようなものなのでしょうか。一言で言うと、自分や自分たちではない誰かのために、「役に立つ」というレベルを超えて具体的な価値を与えることのできる活動である、表現できます。このような公益的な活動を、『①方針編』で定めた「積極的な変化を促すことによる社会への貢献」・「行動的な市民となるための資質の向上」という方向性で、組織内・組織外に対して行っていく。これが、これからの私たちの組織が目指す姿なのです。

私たちは活動を通してどのようなことを目指すのか

効率と効果を上げる手法としてマーケティング力・マネジメント力という切り口を持ち、社会的な活動をより公益的なものとして高めていく私たちが目指すことは一体どのようなことなのでしょうか。「より明るく、より豊かな社会」とは、もう少し具体的に言うと、どのようなものなのでしょうか。

まず、「社会」とはどこに重きを置くべきでしょうか。私たちの活動地域は、言うまでもなく、私たちの住み暮らすまち、「ふくい」です。ここに重点を置かずして、どこに置くのでしょうか。私たちが重きを置くべき「社会」は私たちの活動地域である「ふくい」であると言えます。
では、どのようなふくいが、私たちが理想とする「より明るく、より豊かなふくい」と言えるのでしょうか。この問いについては、現在のふくいが置かれている立場、近い将来にふくいや日本に起こることといった観点から議論を始めていきました。具体的に、ふくいについては、自然減と社会減の2つの要因による市民の減少、高速交通網の整備、JR福井駅を中心とした交通網と玄関口の再開発、国民体育大会の実施に向けた準備、などといった観点が取り上げられました。また、日本全体おいては、少子高齢化と人口減少、情報や企業間連携・競争のボーダーレス化、学習指導要領の改訂、といった観点が取り上げられました。その上で、これらの複雑な要素が絡み合う現在、私たちはどのような理想のふくい像を描けるのか、本当に長い時間をかけて議論していきました。

その長い議論の中から導き出されたのは、理想のふくい像を明確に描くことなどとてもできない、という答えにならない答えでした。そこで、私たちは次に、「世界や日本、ふくいの理想像が明確に描けない今日、明確に描くことができるようになった時のために、今を生きる私たちにできることは何か」という問いを設けました。そして、この問いに対する答えについて、さらに議論を続けていきました。
その結果、辿り着いた結論は、ふくいを、日本全国をリードする「ひとづくりの先進地」とすることです。ふくいに住み暮らす人や住み暮らした人の持つ良い特性、ふくいという土地の持つ良い部分という強みを活かす。ひととまちの補わなければならない点を補う。これらを通して、ふくいを日本で一番のひとづくりの先進地として発展させていく。これが、私たちが今のふくいのためにできることなのです。

私たちはどのようなことに取り組むべきか

では、ふくいが日本全国をリードする「ひとづくりの先進地」となるために、私たちはどのようなことに取り組むべきでしょうか。このことについても、本当に多くの議論を重ねて検討してきた結果、取り組むべきテーマを大きく3つに絞り込みました(下図)。以下では、テーマ別に詳しく説明していきます。

私たちが取り組むべきテーマ

  1. 「ふくい人」の育成
  2. 「育人ふくい」の開発
  3. 仕組みの改善

「ふくい人(びと)」の育成

時勢を読み、時代の先を見据え、地域・日本・世界のために行動する人材はいつの時代でも望まれています。歴史上、ふくいは多くの人材を輩出してきました。特に幕末には、松平春嶽公の元、橋本左内、由利公正、橋本常綱、岡倉天心など政治・経済・医療・芸術と多方面にわたって日本を牽引する人材の宝庫でした。ふくいが再び、このような人材で溢れるよう資質と素養を育成するには、家庭や学校だけでなく、地域全体の協力が欠かせません。福井JCは、この地域としての協力の先駆者となるべきなのです。
私たちは、「ふくい人(びと)」の育成に挑戦していきます。この「ふくい人(びと)」とは、ふくいの伝統的な精神に根ざし、グローバルに通用する、定見と行動のスキルを持つ人のことです。この「ふくい人(びと)」の育成において重視することは、以下の3つです。

伝統的なふくいの精神

まず、「ふくい人(びと)」として育むべき心があります。その心とは、他人や地域のために奉仕し、貢献しようとする利他の心であり、思いやりの心です。ボランティア参加率が高く、蓮如上人以来の「講」の風土が息づいているふくいであるからこそ、これらの心は重視できるものです。また、これらの心は、郷土の偉人の姿勢と行動からも学び取ることができます。心を学びながら、ふくいの歴史や精神風土も学び、誇りを持つ。このような活動を通じて、私たちはふくいにおけるライフスタイルの価値を見直し、思いやりと信頼感のある豊かな人格を醸成することを目指します。

グローバルに通用する力

次に、「ふくい人(びと)」として育むべき視野があります。その視野とは、「ふくいから見た世界、世界から見たふくい」というグローバルな視野です。グローバルな視野を持つ、ということは、自分や自分の住まう地域がどんなところかをきちんと理解した上で、相手や相手の住まう地域についての理解ができることを指します。
この能力について、現在のふくいは大きな課題を抱えています。しかし、歴史をさかのぼれば、渡来人の住まうまちであった大和時代から、アジア・ヨーロッパに向けた玄関口であった明治時代に至るまで、ふくいは長きにわたって国際的な都市であり続けてきました。グローバルな視野を持つための素養は、私たちのDNAに刻まれているはずなのです。

確かな定見と行動力

そして、「ふくい人(びと)」として育むべき能力があります。その能力とは、考え、伝え、聞く力、そして行動へとつなげる力です。小・中学生の学力・体力がともに日本一であるふくいだからこそ、その基礎的な能力の上に積み上げる能力に注目し、開発することができます。これらの能力をレベルアップさせることで、総合的な「生きる力」を磨き上げる。このような活動を通じて、ふくいで、日本で、世界で貢献できる人となるための社会的能力を開発することを目指します。

「育都ふくい」の開発

人に「そのまちに住みたい」と思わせる根源は、どこにあるのでしょうか。おそらく、都会型で社会的に人口が増加しているまちの根源は、“夢”や“華やかさ”、“憧れ”といった言葉で表現できるものとなるでしょう。では、地方では、どのようにして社会的に人口を増加できるのでしょうか。私たちは、“幸福”と“希望”のあるまちであれば、社会的に人口を増加させることができると考えています。小・中学生の学力・体力が日本一であり、出生率も高いふくいでは、子育てが“幸福”と“希望”を象徴づけるものとするものとして考えることができます。これらのことから、私たちが考えたのが「育都ふくい」の開発です。
「育都ふくい」とは、子育て世代が住みたくなり、暮らし続けたくなる先進地方都市のことです。この「育都ふくい」の開発において重視することは、以下の3つです。

育児・教育環境の整理・整備

まず、子育て世代が「住みたい」と思うまちとなるために、私たちは子育てできる環境、教育できる環境の整理と整備に取り組みます。ふくいは子育ての環境として、日本でも有数の地域であるにもかかわらず、そのことはあまり知られていません。また、なぜふくいの小・中学生は学力・体力ともに日本一を維持できているのかを明確に説明できる人は、そう多くありません。客観的に見た場合にふくいの育児・教育環境がどのような評価を受けているのかについて、私たちはあまりにも知らないことが多すぎます。

産業構造の理解と労働環境の整理・整備

「住みたい」と思うまちであっても、収入を得て生活し続けていくための環境がなければ、住み続けられるまちとはなりません。このため、子育て世代が住み続けることのできるまちとなるために、私たちは産業構造の理解、労働環境の整理と整備に取り組みます。絹織物、人絹、眼鏡など多くの新しい産業を興してきたふくいは、どのような経済史・経済風土を持っているのか。また、私たちはどのような働く環境・風土を持っているのか。ふくいという地域において、これらの分野についての研究はあまり深められていません。

文化環境の整理・整備

子育て・教育の面から「住みたい」と思い、収入を得て住み続けられるまちであったとしても、住み続けたくなるまちであるとは限りません。住み続けたくなるまちとなるために、私たちは文化環境の整理と整備に取り組みます。ふくいには大和時代以降の1500年、どの時代にも誇れる歴史があり、多くの面でふくいの伝統として根づいています。この分野においても、国内において、ふくいは相対的に理解が深められているとは言えない地域です。

これらの環境について、私たちは現状をきちんと理解し、整理をしていきます。また新たな環境の整備についても、新たな切り口を、行動を通して提案し、その行動の成果を取りまとめるという方法で提言を行っていきます。

仕組みの改善

2013年に公益社団法人へと生まれ変わった私たちは、前にも述べたように、社会的な活動をより公益的なものとして高めていかなければなりません。そのためには、より効果的に活動できるよう、私たちは組織のカタチ、運営の方法を改善していく必要があります。より効果的に時間という資源が活用できるよう、会議の方式を変更すること。より効果的な議論が行えるよう、各種書類の書式を変更すること。個別の活動ではなく、1年間の私たちの活動全体を通して最大の成果を上げられるようにすること。もちろん、これらはいつでも考えていかなければならないことです。ただ、組織としての枠組みを変える必要のあるこの機会にこそ、いろいろなことが検討されなければなりません。

この仕組みの改善の中でも、組織全体で検討し、行っていかなければならないことが3つあります。それは、広報、資金の獲得、そして人材の確保です。公益組織として効率的かつ効果的に活動を行っていくためにも、これらの3つは戦略的に行っていく必要があります。
ただし、これらは決して「ふくい人(びと)」の育成や「育都ふくい」の開発よりも優先されるべきことではありません。なぜなら、広報を行うことも、資金を獲得することも、人材を確保することも、全ては素晴らしい活動を行っているからこそ、そして行い続けていくからこそ、より効率的かつ効果的になされなければならないことであるからです。いくら広報の仕組みが素晴らしいものであっても、広報すべき内容が薄ければ全く効果的ではありません。これは、資金の獲得にしても、人材の確保にしても同様です。十分に留意していきましょう。

具体的な活動のヒント

私たちは、「ふくい人(びと)」の育成、「育都ふくい」の開発、そして仕組みの改善を取り組むべきテーマとして掲げました。では、それぞれのテーマで、具体的にどのような活動が行われることになるのでしょうか。以下では、常任理事会を中心としたメンバーによる議論の中で出てきた具体的な活動のアイデアを、ヒントとして紹介したいと思います。

  1. 「ふくい人(びと)」の育成
    1. 伝統的なふくいの精神
      • 名勝寺院宿泊による心身鍛錬の実施
      • ふくいの歴史本・ショートムービーの作成
      • 大人の啓発録作成の実施
    2. グローバルに通用する力
      • ポットラックパーティーの実施
      • 多国籍こどもキャンプの実施
      • 福井に居住する海外の方との懇話会の実施
    3. 確かな定見と行動力
      • ふくい人育成プログラムの普及
      • 中高生を対象としたビジネスプランコンテストの実施
      • ジュニアビジネススキル開発塾の実施
    4. 「育都ふくい」の開発
      1. 育児・教育環境の整備
        • 県内外の子育て世代に対するアンケート実施と意見の集約
        • 県外子育て世代によるふくいへのホームビジットの実施
        • 子育て世代との懇話会の実施
      2. 産業構造への理解と労働環境の整備
        • ワークショップコレクションの実施
        • 企業誘致・新しい産業の検討
        • 地場産品の有効活用の検討(芍谷石・繊維・化学品など)
      3. 文化環境の整備
        • 総合大学構築への提言
        • 第1回幕末サミットの実施
        • 名勝の有効活用の検討(足羽山・一乗谷・永平寺など)
    5. 仕組みの改善
      1. 広報
        • 総合的な広報戦略の立案と実施
        • SNSの活用
        • 既存ツールの更なる有効活用とツール拡大の検討
      2. 資金の獲得
        • 継続事業における助成金や補助金の確保
        • 助成金や補助金についての情報の収集
        • 事業協賛企業に対するマーケティングの実施
      3. 人材の確保
        • 継続可能な拡大戦略の立案と実施
        • 「人財」への育成戦略の立案と実施
        • 一人ひとりが活躍できる場の提供

なお、これらのヒントはあくまでもヒントであり、これを実施しなければならないものではありません。これを読まれた皆さんには、これらよりもさらに良い活動を構想し、実現していっていただきたいと思います。

最後に

『②目標・計画編』では、私たち福井JCが今のふくいのためにできることを考え、どのようなテーマを掲げて活動に取り組んでいくべきかを検討してきました。最後に、お伝えしておきたいことが2つあります。
1つは、一度決めた活動を続けることは、公益組織として必ずしも評価されるものではない、ということです。活動としての到達点に達した後も継続し続けることは、効率面から見ても効果面から見てもよいことではありません。そして、何か新しいことを始めようと思ったときには、先に何かを終わらせなくてはなりません。時には、勇気を持って活動を終わらせることも必要です。
そしてもう1つは、この『②目標・計画編』についても、遵守し続けることが公益組織として評価されるものではない、ということです。私たちの活動で変えてはならないものは、『①方針編』でもお伝えしましたが、「より明るく、より豊かな社会」という究極のゴール、そしてその究極のゴールに少しでも近づくために歩み続けるという姿勢です。今後の社会情勢の動向によっては、もっと重要視しなければならないものが生まれてくる可能性は十分にあります。変えることをためらってはいけません。この『②目標・計画編』については、定期的に、遅くとも5年後には内容を見直し、究極のゴールに向けた軌道修正を行っていただきたいと思います。

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