理事長所信

Beyond the border
~理想を掲げ共に挑戦しよう~

公益社団法人福井青年会議所
第 63 代 理事長 林 和哉

はじめに

私は 2022 年 6 月、ベルギーで開催されたヨーロッパのエリア会議に参加をしてきました。
日本国内の世論や新型コロナウイルス感染症の対策を考えるならば、渡航しない方が良かったのかもしれません。しかしながら、いち早くウィズコロナを実践しているヨーロッパの国々を自分の目で見てみたかったのです。そのような考えで参加しようとしていた渡航前の私に、JCI ロシアの会頭が参加されるという大きなニュースが飛び込み驚きました。当時の世界情勢により、とりわけヨーロッパの国々は、ロシアに対しネガティブな感情を持っていたからです。そのような事情とは裏腹に、オープニングセレモニーでロシアの会頭が登壇した際には会場が温かい拍手で溢れました。その後 JCI ウクライナの参加者が登壇し会場は大きな拍手と歓声に包まれました。会場の雰囲気が最高潮に達した時、歴代世界会頭のキアラミラリさんが「人類の同胞愛は国家による統治を超越する。」という横断幕がかかげられ、会場は割ればかりのスタンディングオベーションに包まれました。後日談ですが、ロシアの会頭は、「登壇した際ひどいブーイングが起きるかもしれない。」と思いながらステージに立たれたそうです。

しかし勇気をふりしぼり現地に足を運び、「ロシアの全国民が戦争に賛成しているわけではなく、むしろ知らない間に戦争に巻き込まれており、どのような問題があっても武力による解決は間違っていると思っている。」とメッセージを発信した事で、少なくともその会場にいた参加者たちはロシアの青年の生の声に触れることができ、青年会議所が掲げる恒久的世界平和を望む仲間だという事を再認識し、心を一つにしたのだと思います。今回の出来事には参加者の考え方や感情、金銭的なものや時間的なもの、起きている物事を自分事としてとらえられる範囲の広さなど、様々なレベルや形、視点、立場や心情のボーダーがあります。普通なら、ここに登場した誰かが、どれか一つのボーダーを超えることができなかった場合同じ結果にたどり着けないと思います。しかし、私は今回のエリア会議の件は、もし何かが違ったとしても、最終的にきっと今回と同様の結果にたどり着いたのではないかと思います。なぜなら、我々は青年会議所のメンバーだからです。青年会議所には恒久的世界平和の実現という大きな理想があり、ボーダーを超える力をつける場が数多く用意されているからです。
では、私たちが所属する福井青年会議所はどうでしょう。私たちは昨年、Action Planfrom 2022 を策定し、その核を「GLOBAL FUKUI」~世界に選ばれるまちへ~と定めました。この理想を実現させるべく、同じ志を持つ仲間や協力者の方たちと共に、様々なボーダーを越え、新たなる運動を作り出していく必要があります。

ふくいの未来に向けて

私たちの創り出す運動は、世界に選ばれるまちを目指して展開する必要があります。世界に選ばれるにはどのようなボーダーを越える必要があるでしょうか。北陸新幹線の延伸が控える中、選ばれるふくいを実現するためには、まず海外や外国籍の方に対する苦手意識を払拭する必要があります。これはメンバーだけでなく、ふくいに住み暮らす人々にも同じことが言えます。次に私たちふくいに住み暮らす人々が地域の魅力を正しく認識しなければなりません。そのためにはふくいにしかない魅力が何か、世界に誇れるものは何か明確になっている必要があります。新幹線が延伸するから人が来るのではなく、魅力がある場所に新幹線が通り訪れやすくなるから選ばれるようになるのであって、魅力がはっきりしない場所を目的地に定めてくれる人はいません。また、学力が全国トップクラスかつ子育て環境が整っていることももちろん誇るべき魅力です。その魅力を知る若者を増やす必要があります。
また、福井青年会議所は韓国の水原青年会議所と国交正常化前に交流を深め姉妹 JC 締結を成し遂げ、また、アメリカのニューブランズウィック市とは青年会議所の事業がきっかけで姉妹都市になるなど、様々なボーダーを超え海外との交流や民間外交を積極的に行ってきた歴史があります。新型コロナウイルス感染症によって近年、友好都市や姉妹都市との交流が滞っていましたが、2023 年は今までできなかった分も想いを込めさらに交流を深めてまいります。

国際アカデミーに向けて

国際アカデミーとは、世界約 100 カ国の国家青年会議所会頭予定者と、日本国内 47 都道府県より選抜された未来あるメンバーがバディを組み、寝食を共にしながら、相互理解やリーダーとしてのあるべき姿、恒久的世界平和の実現に向けて何をすべきか答えを導き出すという JCI の中でも最高峰のプログラムです。その招致に向けて準備を進めてまいります。このプログラム参加者は、将来各国の政治や経済の中心になるメンバーも少なくなく、日本からの参加者も地元から期待され参加している重要なメンバーであり、その参加者がふくいのファンになってそれぞれの地元に帰った時の効果は計り知れません。期待以上の効果を得るべく戦略的にふくいの魅力を伝える準備をしてまいります。国際アカデミーの大きな目的としてふくいのファンづくりがあります。これまでなぜ国際アカデミーを招致するのかというコンセンサスを図ってきましたが、本年はふくいにどのような種をまくか明確にする必要があります。海外のメンバーやこれからふくいに訪れる外国籍の方々にふくいの魅力を伝えようとするとき、我々福井青年会議所の活動圏域以外にも素晴らしい魅力があります。同じ志をもつ仲間との連携を大切により多くの魅力を伝えることでより広い範囲に事業の効果を波及させます。また、国際アカデミーの招致を目的にするのではなく、その後何を成したいのかしっかりビジョンを持って、自分たちだけでは実施がかなわなかったようなダイナミックな運動に繋げていくことが大切です。

一人ひとりを大切にする運営

青年会議所は実に優れた会議システムを持っています。このシステムは世界で大切にされている価値観の 1 つである民主主義の凝縮された形です。この形になっている意義を理解し会議のルールを守りしっかり準備をして臨めばその効果は何倍にもなります。また、常により良い仕組みがないか検討する必要があります。会議に出席するすべての人は、丁寧に合意形成していく事や、期日を守るなど基本的な心構えを持つことはもちろん、より良い仕組みがないかについても考えを巡らせ、時間や予算、マンパワーなど限られた資源で最大限の効果を生み出す気概を持って会議に臨まなければなりません。そのためにはプライベートの時間や仕事の時間をやりくりしなければならないことが起こるかもしれません。しかしそのことは、時間の使い方がうまくなり今までより効率よく仕事ができるようになるかもしれませんし、意識の持ち方次第では、その他にも多くのメリットがうまれる可能性があります。そのような機会の提供をしている意識を持ち、そのうえで、組織全体がさらなる高みを目指すため、必要不可欠かつとても尊いものであるという意識を持って運営してまいります。
また、運営側がこのような意識を持てるようになるためには、なぜ、何のために今この行動が必要なのか、という事を常に考え、他者を慮り、メンバー一人ひとりに寄り添う必要があります。不安や疑問を解決できるよう先んじて準備するよう心がけ、メンバーから必要とされ、頼られる運営を実践し、私たちが実施するすべての事業や運動を青年らしくさらに加速させてまいります。さらに、国際的な礼儀礼節と、日本では一般的とされている礼儀礼節の違いについて理解を深め会員に周知し、国際的な視野を広げます。

会員拡大と学びの素地づくり

地域には間違いなく青年会議所が必要です。自分たちの住み暮らす地域は今後どうなるべきで、そのためには今何が必要なのか。このことを真剣に考え自分たちで行動を起こす団体がなくなってしまえば、今以上に地域が良くなることはありません。青年会議所は、日本国内はもちろんのこと、世界中にネットワークを持ち、同じ志を持って運動に携わる仲間が大勢います。このネットワークを最大限に活用し、情報交換をしながら青年会議所が実施している様々な事業を知ることは、これから青年会議所へ入会を考えている青年に対し、より多くの情報を伝えられることにもなります。これまでの固定観念にとらわれず、多様性を尊重する組織を目指します。さらに、同じ地域で活動している他団体や他の地域で運動を展開している青年会議所と積極的に交流を深め情報をアップデートし、青年会議所はなんのために存在し、何をしている団体なのか、他団体との違いや私たちの理想をしっかり伝えられるよう準備し、共感してくれる仲間を増やしていく事が大切です。
また、新しい仲間を迎え入れた際に、実際に成長を実感できる学びの機会があるという説明を忘れてはなりません。青年会議所は、出来なかったことが出来るようになるという成長と、得意だと思っていた事が、仲間とより高い次元で切磋琢磨することで自分の強みと呼べるまでになるという成長も実感することが出来ます。青年会議所は 40 才で卒業するまで等しく成長の機会が提供されますが、五角形や六角形のレーダーチャートを思い浮かべたとき、出来ないことが出来るようになることももちろん大切です。しかし、今自分が得意なことを突き抜けるものにするのを忘れてはなりません。まずは自分を良く知り、どのような姿になりたいか明確な理想を持ち、そこに向けて青年会議所で得られる機会を最大限活用し、自分らしさに磨きをかけていく必要があります。そうすることで青年会議所を卒業した後にもリーダーとして社会に求められる人財に必ず成長でき、社業や家族、自分の人生のさらなる発展が望めます。また、市民に伝わる情報発信を心がけ、私たちの運動をわかりやすく伝えてまいります。

むすびに

私たちは様々な選択をして今この時を生きています。今までの経験や情報収集でたやすく判断することが出来ることもあれば、長い時間悩みぬいて決断したこともあると思います。これからも様々な選択の必要に迫られることがあるでしょう。そんなときいろんな雑音を気にせず一度落ち着いて考えてみてください。

それは本当に越えられない border なのか。
それは本当に存在している border なのか。

勇気を出して一歩踏み出してみれば、思いがけない解決法が待っていることも少なくありません。踏み出して自分の五感で感じたからこそ気付く事も多くあります。踏み出す勇気が出ないときも大丈夫です。私たちには同じ志をもつ多くの心強く温かい仲間がいます。きっと隣に寄り添い、成功への道しるべになってくれます。新しい挑戦をして失敗したとしても大丈夫です。あなたが本気で向き合った今までは、きっとこれ以上ない成長の糧になるでしょう。

大きな理想を掲げ、昨日までのあなたを超えましょう。
失敗を恐れず新しい JC 運動に一緒に挑戦しましょう。

あなたと踏み出す一歩が明るい豊かな未来へつながるのです。

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